TDS®️2019

TDS®︎の記事をあげたかったのに、ここしばらくこのブログにアクセスできなく、レースからだいぶ時間が経ってしまいました。

でも、やっとアクセスできたので、ここにTDS®︎の記事を残しておきたいと思います。


TDS®︎

UTMB®︎のレースの中のひとつ。イタリア側クールマイヨールからシャモニーの街までの総距離146kmにも及ぶレース。昨年までは120kmだったが、今年からコース変更。より厳しく美しいコースへと生まれ変わった。

開催日 8月28日

距離 146km

獲得標高 9100m

出走者 1785人

完走者 1091人

タイム 27時間15分

順位 総合96位(女子13位)

●TDSへ向けてのトレーニング

今回のレースは獲得標高が多いため、山岳でのトレーニングをメインに行った。なるべく実際の距離と高低差が似たコースを探してトレーニングをし、そこでの自分のペースや体感的なキツさなどを覚えておいて、レース中にも「ここの登りは女峰山と同じ」など、心の余裕を持てるようにした。

週に1回の低酸素トレーニングを行った。標高3900m以上でのバイクトレーニング。30〜40分ライドとインターバルなど。

1週間の目標運動時間を設定。通常で20時間/週。ハイトレーニング週で30時間/週を目標とした。トレーニング後にはBODYMAIMTEを摂取し、コンディション維持に努める。

●食事・睡眠について

6月に貧血に診断を受け、そこからは回復のための食事と鉄剤やビタミン剤の摂取を行う。トレーニング量は特に減らさず。今までの不調の原因が一つ分かったことは少しホッとした。

赤身肉や魚を昼・夜はとるように心がける。朝は MCTパウダーとマカパウダーを摂取。

貧血診断を受けてからはカフェイン摂取量は減らし、レース2週間前からカフェイン断ち。

睡眠は最低7時間はとることを心がけた。

●レース中の補給について

持参したものは、

・500mlか600mlのソフトフラスコに水だけのものとshotzエレクトロライトパウダー2本溶かしたもの

・shotzフラスコにshotzエナジージェル3本入れたものを2本

→これらは3箇所のサポートポイントでサポートに準備しておいてもらって全て交換。

そのほか、shotzエナジージェル3本、MCTゼリー、チアバー、ジンジャー飴などを持参。

バーは結局食べなかった。

サポートエイドではおかゆ、お味噌汁、フルーツなどを摂取。

オフィシャルエイドでは、ライス入りのスープ、フルーツ、夜の時間帯は温かい紅茶やコーヒーなどを摂取。

●レース当日

前日は夜7時に就寝。当日は深夜12時30分起床。準備などをして1時45分に宿出発。2時30分頃にスタート会場のクールマイユール到着。車の中でバナナ1本とパン2つを食べる。

到着後車の中で15分ぐらい仮眠。その後準備をしてトイレに2回行って、スタート場所へ移動。

スタート順は前回の結果などは全く関係なくITRAポイントによってエリート選手と一般選手に分けられる。今回はエリートの場所から入れたので、もう少し移動は遅くても良かった。

●レース

・START〜Bourg Saint-Maurice(51km)

午前4時スタート。

スタート直後からみんな飛ばしてる。落ち着きながらもあまり離されないように意識。

最初は7kmで800mアップ。1時間目標を1時間2分で通過。ペースはこれぐらいで良いことを確認できた。

標高が上がると少し寒さを感じたけど、もう少ししたら夜明けだと思ってウェアは追加せずそのまま進む。

16km地点のエイドLac Combal、2時間15分目標を2時間19分で通過。だんだん明るくなってきたのでヘッデンをしまう。

コース最高地点2603mのCol Chavannesに登ったらそのあとは平坦な林道をしばらく走り、アップダウンを繰り返しながら36km地点のSaint Bernardへ。ここはたくさんの人が応援していて、サポートクルーや日本のメディアの人たちもたくさんいて元気をもらえた。

ここからサポートエイドのBurg Saint-Mauriceまでは11kmで1400mダウン。この下りが本当に長く、少し疲れてしまった。

最初のサポートエイド到着。サポートに「あまりshotzが減ってない」と言われる。そういえば補給が少なかったかも、と思ってエイドでおかゆ、ゼリー、フルーツなど多めに補給。

区間目標6時間50分を実際には7時間3分で通過。


・Bourg Saint-Maurice(51km)〜Beaufort(91km)

サポートエイドをあとにして、次は11kmで1700mアップの登り。女峰山と同じプロフィールで練習をしてきた区間。でも、ここで急に体が動かなくなる。脚が重いというよりかは、体に力が入らない感じ。ここでたくさんの人に抜かされてしまって、自分の目標タイムも大幅に落としてしまった。さっきのエイドで、それまで補給が少なかったのに急に補給を多く取りすぎた事によって血糖値スパイクが起きてしまったのかと思う。これは自分のミス。

でも、体が動かなくても、「まだまだ前半。またいつか復活する」って気持ちだけは前向きに進めた。

なんとか1700mアップを登りきり、次の67km地点のエイドで少し休んで、ここでまたサポートクルーやたくさんの人に応援してもらったら元気出た。午後13時30分通過予定を15時に到着してしまったので、サポートはだいぶ心配してたみたいだった。ここからサポートエイドまでは25km。25km走ればまたみんなに会える!と思って、とにかく気持ちを落とさないように心がけた。

この辺りからまた徐々に体も戻ってきて動くようになってきた。途中でいろんな人から自分の順位や前の人との差を教えてもらって、前を追えるようになってきた。235位まで落ちた順位は150位まで上がってきていた。

2つ目のサポートエイドBeaufortでは多くの選手が長い休憩を取っているようだった。私もここで14分休憩をとった。でも体は動いていたので良い感じだと思った。サポートからも「表情がいい」と言われて嬉しかった。

区間目標7時間を実際には8時間31分で通過。


・Beaufort(91km)〜Les Contamines(121km)

ここからは夜のパートになった。そしたら急に眠気が襲ってきた。カフェインを摂取すると多少は効くけど、またすぐ眠くなってしまう。歌を歌いながら進んだ。それでもどうしても耐えられない時は15秒目をつぶる、ということを繰り返しながら進んだ。

自分としてはここでもかなりタイムは落ちてしまったかなと思ったけど、前2人の女子に追いついたら眠気も吹き飛んで、ここからギアを上げて進むことができた。それからは適度なアップダウンを繰り返すトレイルを気持ちよく走ることができた。

112kmCol Du Jolyのエイドでは温かいスープをもらった。周りの選手はみんなかなり疲れてそう。でも自分はまだまだいけると思った。

5kmで780mダウンの下りはけっこうテクニカルな部分も多かったので慎重に下った。

そのあとの4kmのフラットはしっかり走ることができた。

3つ目のサポートエイドのコンタミンに到着。真夜中の街はすごく静かだった。ここが最後のサポートエイド。滞在時間は13分。梅粥とお餅入りの味噌汁などを食べた。ここまでサポートしてくれたサポーターにお礼を言って、じゃあシャモニーでって言って、エイドを出た。流石に疲労はきてたけど、やってやるって気持ちで最後のパートに進めた。

区間目標5時間30分を実際には6時間15分。


・Les Contamines(121km)〜Goal Chamonix(146km)

ここの最初の4km550mアップの登りでも眠気が襲ってきたので、また歌を歌ったり15秒作戦でなんとか乗り切った。そしてちょっと下った後に、このコースラストの登りになった。3kmで500mアップ。この登りを下から見上げた時に、本当に垂直の壁のように思えて、その壁に点々とライトが光っていて、こんな登りが最後に用意されているなんて、このコースは本当にすごい!と思った。でも、絶望とかそういう感じはなく、足を一歩一歩出していけばこの登りも終わるんだ、と思ってあとは無心で登れた。山頂にはすごく大きなライトが光っていて、その光を目指して黙々と登った。

登りきったらここからは下り。けっこうガレガレの下りだった。ものすごい水量の滝の上にかかる細い吊り橋があり、ここは昼間に通ったらすごいんだろうなぁと思った。

ラストのエイドまでのロードの下りでは、大腿前部がやられていて痛かった。でも感じている痛みはそれだけだった。頭もクリアだし、お腹も痛くないし、ずっとストックを使ってきたからちょっと肩が凝ってるぐらい。

ラストエイドのLes Houchesからゴールまでは8kmの走れる林道。最後までしっかり走り切ろうと思った。

林道は登りもしっかり走れて、Chamonixの街に入って仲間が迎えてくれて、最後の最後に後ろから猛ダッシュしてくる女子一人に抜かされてしまったけど、もうここまでやりきったっていう気持ちの方が大きかった。

課題としていた、「レースを通してメンタル面を安定させる」ことが、今回はすごく上手くいって、自分らしいレースがこのTDSでできたことが嬉しかった。前回のUTMFからの進歩だったと思う。

何よりサポーターや仲間に迎えられるゴールは本当に最高だった。

区間目標4時間30分を実際には5時間7分。


●反省

まずは最初の補給ミス。そこからの51kmから体が動かなくなり大幅にタイムを落としてしまったことが反省点。思えば当日の朝食や前日の夕食も、いつものレース前よりかは少なかった。レース前半から補給は怠らないように。

あとはトップ10入りを狙うなら、前半からもう少しプッシュして、もっと良い位置にいないと、後半いくら頑張っても追いつけない。後半上げていけるレースは楽しいけど、前半からもう少し勝負できるように。

エイド滞在時間は5分前後に。

●装備

・シューズ:TIMP1.5 / ALTRA

・ザック: FOCUS Light / Answer4

・ライト:Petzl NAO , レッドレンザー H8R

・ストック:BlackDiamonds Ultradistance


最後に、このTDS®︎は本当に素晴らしいコースでした。レース当日は曇りがちな天気でしたが、それでも目の前に広がる大自然は本当に美しく、進んでいくのがすごく楽しかった。

アップダウンは厳しく、壁のような登りやテクニカルな下りも多かったけど、それがまた挑戦心をくすぐります。

そして、こんなにも素晴らしい経験をサポートしてくれた旦那さんやAnswer4のコバさん、一緒にシャモニーの街で過ごしたAnswer4チームのみんなと共有できたことが何より嬉しかった。

またこの場所に戻ってきたいと、強く思いました。

来年、また、このシャモニーの地に立っていることを楽しみに。そしてそこへ向けての準備も進めていきたいと思います。


Yukari Hoshino

Yukari Hoshino / Run NM

栃木県日光市在住のマウンテンランナー星野由香理のオフィシャルページです。山を愛し、自然から多くを学び、日々野山を駆け回りながら生活しています。アスリートから一般の方までのトレーニングをサポートするフィジカルトレーナーとしても活動しています。

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